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首を動かす際の痛みの原因は「筋短縮」から生じる「神経因性疼痛」
ナーブー、ずいぶん胸を反らしながらスマホを見てるね。
そうなの。
なんか、スマホの画面を見ようと下を向くと首の後ろが痛いんだよね。
だから首を動かさないようにしてたら、こんな格好でスマホを見るようになっちゃったの。
そうなんだね。
その症状、多くの現代人が悩んでいるみたいだよ。
「スマホ首」とも言われているよね。
最初は首の後ろにコリを感じるだけだったのが、ひどくなるとナーブーみたいに「首を前に傾けた際に痛みが走る」ようになってしまうんだよね。
ナーブーは「下を見たときに痛みが出る」みたいだけど、逆に「見上げる動作をするとき」に首の後ろに痛みを感じる人も多いみたいだよ。
いずれも、首の周辺筋肉の筋短縮から発生する「神経因性疼痛」だね。
「神経因性疼痛」てなぁに?
それより先生、なんかいい対処方法なぁい?
では今回は首を傾けた際に生じる神経因性疼の「発生原因」と「対処法」をお教えしましょう!
待ってました♪ 是非お願いしまーす♪
このように、首を動かす際に生じる痛みは筋短縮により発生する「神経因性疼痛」です。
対処法をご紹介させていただく前に、まずは筋短縮と神経因性疼がそれぞれどのように発生するのかをご紹介していきましょう。
首の「神経因性疼痛」が発生するまでのメカニズムをご紹介!
きっかけはスマホ使用などの継続的な「不良姿勢」
筋短縮の原因は様々ですが、首の筋肉に特化して考えた際、主な原因として考えられるのは「継続的な不良姿勢」です。
現代人の場合、その主たる原因の1つとして考えられるのが「スマホの使用」です。
多くの人が、スマホの画面を見る際に「覗き込むようような姿勢」を取りますよね。
電車に乗っていると、ほとんどの人が同じような前傾姿勢でスマホ画面を見ている光景をよく目にします。
引用元: feely
ある調査によると、2018年でのスマホの使用平均時間(ニールセンデジタル発表)は3時間7分だったそうです。
つまり、現代人の多くが一日約3時間、首の後ろに負担をかけていることになります。
スマホだけではありません。
他にもPC・ゲーム・読書・家事・事務作業(デスクワーク)・勉強など、今の時代、前傾姿勢になりがちな機会がたくさんあります。
頭の重さは約5キロといわれています。
つまり「重さ5キロ」を首の後ろの筋肉だけで長時間支えることになります。
これは、かなりの高負荷です。
そして、この姿勢が習慣化すると「頚椎」は前にまっすぐに伸びた状態になります。
これが「ストレートネック」です。
さらには胸椎が後ろに大きくカーブするようになります。
これが典型的な「猫背」です。
また、これに伴い肩が前方に巻き出るようになります。
これが「巻き肩」になります。
不良姿勢から「血行不良→神経障害→筋短縮」が生じるメカニズム
こうして首の後ろが「延びて突っ張ったままの状態」となると、「一部の筋肉に継続的な負荷」がかかることになります。
この「一部の筋肉への継続的な負荷」は「筋肉の硬化」の直接原因となり「血行不良」を引き起こします。
また、この一部の筋肉への継続的な負荷は「骨」にも影響し、骨と骨の位置関係にズレが生じることになります。
骨と骨が「関節が十分に機能できるような最適な位置関係にあること」をアライメントが正常であると表現します。
すなわち、一部の筋肉への継続的な負荷は「アライメント異常」を引き起こすのです。
そして、このアライメント異常も「筋肉の硬化」の原因となります。
すなわち、一部の筋肉への継続的な負荷は「直接的」に筋肉を硬化させるだけでなく、骨のアライメント異常を経由させ「間接的」にも筋肉を硬化させるのです。
こうして、スマホ使用などの不良姿勢は直接的・間接的(骨のアライメント異常)に筋肉を硬化させ、「血行不良」を引き起こすこととなります。
なぜアライメント異常が血行不良を引き起こすのか?
骨の位置関係が最適な状態からずれていると、その影響は身体バランスに影響を及ぼします。アンバランスが生じると、それを補うための【筋肉A】が収縮を強いられることになります。
こうして【筋肉A】が収縮することで、更なるアンバランスが発生します。
そして、今度はそのアンバランスを補正するために別の筋肉【筋肉B】が機能せざるを得なくなります。
これが【筋肉C】【筋肉D】と続き、結果、いくつもの筋肉が「姿勢維持」のため、常に収縮を強いられることになるのです。
こうして、アライメント異常が発生することでいくつもの筋肉が常に収縮を強いられることになり、筋肉が硬化し「血行不良」が生じることになります。
このようにして生じる②血行不良により③神経障害が発生します。
そして、③神経障害により④筋短縮が発生するのです。
「継続的な不良姿勢」
↓
②血行不良
↓
③神経障害
↓
④筋短縮が発生
なぜ血行不良から筋短縮が生じるのか?
血行不良から筋短縮が生じるメカニズムをもう少し専門的にご説明しましょう。
まずは「血行不良」の詳細を。
具体的には祖血(そけつ)と再灌流(さいかんりゅう)と呼ばれる現象が起こります。
祖血とは、血流減少に取る局所的な貧血のことをいいます。
再灌流は、祖血が生じた部分に再び血流が戻ることを言います。
この祖血と再灌流が生じるとそこにフリーラジカルと呼ばれる刺激物質が発生、神経にダメージを与えることになります。
神経障害が生じると、その神経が支配する筋肉全体にアセチルコリンと呼ばれる物質が大量に広がります。
このアセチルコリンは筋肉の収縮を促進する神経物質であり、この現象により筋肉が過剰反応するようになり、少しの刺激で過剰に収縮をするようになります。
神経障害によりアセチルコリンが大量発生し過剰反応を起こす現象を徐神経性による「超感受性」といいます。
この超感受性により、フリーラジカルで受けた刺激に筋肉が過剰反応を起こし、筋肉を収縮させるようになります。
これが筋短縮の発生メカニズムの詳細になります。
筋短縮から「神経因性疼痛」が生じるメカニズム
ふぅん。血行が悪くなることで神経障害が起きて、それで筋短縮ができるんだね~。
ねぇ、先生。筋短縮って「コリ」のことだよね?
そうだね。
ナーブーの周りにも首のコリがあるって言っている人がいるんだけど、その人は「動かしたときの痛み」はないみたい。
「曲げたときに痛みが出る人」と「首のコリだけの人」は何が違うの?
コリだけなら我慢できるのに。。
そうなんだよ。筋短縮(コリ)が発生している人でも、そこから「神経因性疼痛」が生じている人といない人がいるんだよね。
ここからは筋短縮(コリ)から神経因性疼痛が発生するメカニズムを紹介しましょう!
両者の間にどういう違いがあるのか?が分かってもらえると思うよ!
首の後ろに④筋短縮が発生すると、頚椎周辺の神経が「物理的に圧迫」されることになります。
それにより、その神経にさらなる⑤血行不良が生じ、そこからさらに⑥神経障害が発生する場合があります。
こうして生じた⑥神経障害から⑦神経因性疼痛が発生します。
「継続的な不良姿勢」
↓
②血行不良
↓
③神経障害
⇒「運動神経」に発生
↓
④筋短縮が発生
↓
⑤血行不良
↓
⑥神経障害
⇒「運動神経・感覚神経・交感神経」に発生
↓
⑦神経因性疼痛が発生
不良姿勢により生じる③神経障害は身体の比較的表面に位置する筋肉の「運動神経」に発生します。
そのため、この③神経障害では神経因性疼痛は発生しません。
ですが、④筋短縮は身体の深部の筋肉に生じる筋短縮に生じるため、神経障害は「運動神経」だけでなく「感覚神経」にも生じることがあります。
こうして、神経因性疼痛が発症するのです。
神経因性疼痛は「感覚神経」に神経障害が生じた際に発症します。
筋短縮は「運動神経」に神経障害が生じた際に発生します。
そして、もう一つの抹消神経「自律神経(交感神経)」に神経障害が生じると手足の冷えや内蔵機能の異常などが発症することになります。
つまり「筋短縮(コリ)のみの人」と「神経因性疼痛が発生している人」の差は、④筋短縮により生じる神経障害が⑥「感覚神経」に発生しているか否かということになります。
じゃあ、神経因性疼痛が出ているナーブーは「感覚神経の障害」が起きてしまっているってことだね。
起きていない人もいるのに。くやしい~
悔しがっている場合じゃないよ。
本当に懸念しなきゃいけないのは神経因性疼痛が継続的な痛みになってしまうこと、つまり「慢性痛」になってしてしまうことなんだよ。
神経因性疼痛が「慢性化」すると改善が難しくなってしまうからね。
次に紹介する「慢性化のメカニズム」を知ってもらえば、慢性痛がなぜ治りにくいのかが分かってもらえると思うよ。
痛みが「慢性化」するメカニズム
神経因性疼痛が厄介な点は、痛みそのものよりも、その痛みが慢性化しやすいというところにあります。
一度「慢性化」した神経因性疼痛は、簡単には改善できません。
ここからは痛みが慢性化するメカニズムをご紹介させていただきます。
「継続的な不良姿勢」
↓
②血行不良
↓
③神経障害
⇒運動神経に発生
↓
④筋短縮が発生
↓
⑤血行不良
↓
⑥神経障害
⇒運動神経・感覚神経・自律神経に発生
↓
⑦神経因性疼痛が発生
⑥神経障害は感覚神経だけでなく、「運動神経」にも発生します。
上の図の⑥神経障害を⑥運動神経障害と⑥感覚神経障害に分けると以下の図のようになります。
先ほど説明したように「運動神経の神経障害」は筋短縮を引き起こします。
図に表すと以下のとおりです。
お気づきでしょうか?
- ④筋短縮
- ⑤祖血と再灌流
- ⑥運動神経障害
この3つが三角形を成し、矢印が循環する「スパイラル構造」になっているのです。
この循環により、筋短縮はどんどん悪化します。
そして、最終的に「筋硬結(きんこうけつ)」となるのです。
筋硬結とは、炎症で損傷した箇所の治癒が不完全のまま停止してしまったが故に「硬く短縮したままの状態になっている筋繊維」のことを言います。
こうして筋短縮を起こしていた筋肉が「筋硬結」になると、スパイラル構図が「固定化」されます。
④⑤⑥のスパイラルが固定化されると、⑥感覚神経障害も「固定化」されることになります。
こうして、筋短縮が「筋硬結」になることで神経因性疼痛が「慢性痛」となるのです。